「うわっ、さくら髪の毛バリバリ」


「そりゃ1日中、海で遊んでりゃね」


「せっかくきれいな髪なのにな」



そう言って、いつくしむように触れられる手。



「……あたしも洗ってあげるよ」



シャワーを奪い、レオの頭に浴びせた。



「お客様、かゆい所はございませんか?」



おどけてたずねると、


「さくらって美容師役、似合わねー」


といつもの調子で生意気な返事をしてくる。



それがあまりにも日常に思えて、あたしは笑っていた。



変だね。

離れなきゃいけないなんて……。





シャワーで濡れたレオの猫っ毛が、するするとあたしの指の間をすり抜けていく。



闇に目を凝らして

その髪を見つめて。



ああ、最初に目についたのはこの金髪だったな……

なんて、ふと思い出す。



次に印象的だったのは、雪花石膏のような白い肌。


大きくてよく動く瞳。


少年の影を強く残した、小さな体。



そんな男の子がバカみたいにデッカイ声で“ウルトラマンレオ”の主題歌なんて歌っていたから、勝手に名前つけたんだよね。



“レオ”って……。




「……っ」



シャワーよりも熱い雫が、目じりから流れる。



「泣かないで」



レオの唇がまぶたに触れて、あたしは目を閉じた。