月明かりの下、レオと手をつないで宿まで戻った。
部屋に入ると、レオは何も言わずにバスタブにお湯を注いだ。
開け放した浴室の扉から湯気が漏れてくる。
「一緒に入ろっか」
レオの言葉に一瞬躊躇して、あたしはうなずいた。
少し恥ずかしいけど……一緒にいられる残りわずかな時間を、少しでも近い距離で過ごしたくて。
だってどうせ離れるのなら、少しでも楽しい思い出を胸に、待っていたいじゃない。
「うん……。一緒に入る」
服を脱ぐのをためらっていると、レオは全ての電気を消した。
暗闇の中に白く靄がかかった、狭いバスルーム。
幻想的だ、なんて思うのはちょっと変だろうか。
「さくら、来て。髪洗ってあげるから」
レオに呼ばれ、ひんやりしたバスルームの床の上をゆっくり歩く。
ちょこん、とレオに背中を向けて座ると
「よしよし、お利口さん」
頭をなでられた。
……なんで子供扱いなのよ。
少しだけムッとしつつ、勢いよく出た熱いシャワーは心地いい。