「ちゃんと……つないでてよね」
「はいはい、お姫様」
クスクス笑いながら、レオは宙ぶらりんなあたしの右手を取った。
レオの、しっとりと汗ばんだ手のひらの感触。
これを手離さずにいられるのなら
あたしはどこまでだって逃げてみせる……。
「暑かったでしょう。いらっしゃい」
宿はおしゃれな雰囲気の漂うコテージだった。
外には広い芝生があり、昨夜誰かが使ったらしいバーベキューの台が、そのままになっていた。
受付で迎えてくれたおばさんは、声だけでなく笑顔もエリコさんにどことなく似ていて、あたしたちの気持ちをほぐしてくれた。
「すみません、急な予約をお願いして」
「ええんよ。エリコから聞いてるから」
おばさんは笑いジワの刻まれた目もとをほころばせ、麦茶の入ったグラスをふたつテーブルに置いた。
「うちは田舎やけど、ええとこやで。ゆっくりしていってね」
そう言い残し、おばさんは部屋を出て行った。
あたしは木の香りがする床に、ごろんと横になった。
クリーム色の天井が視界に広がる。
「いい感じの宿でよかったね」
「うん」
天井が見えなくなったと思ったら、代わりに割りこんできたのは、レオのドアップ。
押しつけるように唇が触れて、瞳をふせた。