「あー、いらっしゃい! 今、席ないねん。ちょっと待ってくれる?」



カウンターの中から小柄なおばさんが顔を出す。すると、



「俺らもう帰るから、ここ座ったらええわ」



テーブルに陣取っていた作業着のおじさんたちが、席を立った。



「ホンマに? 悪いなあ、富田さん」


「そん代わりオバチャン、まけてぇや」


「何言うてるん。ひとり2枚ずつ食べといて」


「はいはい、なんぼ?」


「3千万円」



ギョッとしていると、おじさんは普通におしりのポケットから3千円を取りだして、カウンターに置いた。



……アキラさんとエリコさんのやりとりだけでも圧倒されるのに、これだけ関西人が集まると相当の迫力だ。



おばさんはカウンターから出てくると、空いたテーブルの上を手際よく片づけだした。



「アキラちゃん久しぶりやなー。エリちゃんも元気にしてたん?」


「おかげ様で」


「そろそろうちのお好み焼きが恋しくなってくる頃やろと思ってたわ。……あれ?」



おばさんの視線は、エリコさんの肩をすり抜けて、入口付近で棒立ちしているあたしとレオに注がれた。