「んー、でもなあ」
「あたしらだって、似たようなもんやんか」
「でもなあ」
「もぉーっ、何やねん! あんたダルイわ!」
本人たちにとっては普通なんだろうけど、あたしは目の前で操り広げられる関西人のやりとりに、圧倒されてしまう。
けど、なんだか嫌な気持ちはしなくて。
「あの……」
私の声に、関西カップルは「ん?」と同時に振り向いた。
「おふたりも似たようなものっていうのは?」
「ああ、うちらも家出人同士のカップルやねん」
アキラさんがその短髪をいじりながら言う。
続いてエリコさんも。
「そうそう。ま、うちらの場合は、それぞれが家出してる時に知り合ったんやけどね」
なるほど。
世の中、逃げ出す人間っていうのは、結構いるもんなんだな。
それも、沖縄に行きそこねたこんな夜に、沖縄で出会った人たちに会うなんて。
「……しゃあないな」
アキラさんが、観念したように言った。
「2週間でよかったら、俺の部屋貸したるわ」
「えっ」