「……レオ、あたし、タバコ買ってくるね」
また泣いてしまいそうだったから、あたしは作り笑いをして、部屋を出た。
人気のない廊下を歩きながら、目頭をこする。
ホントダメだな、あたしって。
レオのこと守るって言ったそばから、弱気になってどうするんだ。
もっと、強くなれたらいいのに。
「あっ」
タバコの自販機の前で、思わずマヌケな声を出すあたし。
とっさに部屋を出たもんだから、財布を持ってくるのを忘れていた。
困っていると、ポンとあたしの肩を背後から誰かがつかんだ。
心臓が大きく跳ね上がり、あたしは身構えて振り返った。
あたしの目は、きっとこれ以上ないくらいに見開かれていただろう。
だけどそんな様子を見て、肩に置いた手の持ち主も、少しビックリしていた。
「……あ」
あまりに意外な人物に、あたしは瞬きを忘れた。
相手はあたしの顔をまじまじと確認すると、
「やっぱり! さくらさん、やんね?」
「ほら、沖縄で会ったん、覚えてます?」
と、親しげに関西弁を操りだす。
あたしより2、3コ年上くらいの、ツンツン頭の男の人と
小柄でボーイッシュな女の人。
あの、沖縄の宿で会ったカップルだった。