「なあ、俺が何も気づいていないって、思ってたのか?」


「え……」


「前にさ、さくらの部屋で、こいつに出くわしたことあったよな?」



あたしは足がすくんで動けなくなる。


怖い。


けど、目の前のコウタロウから視線をそらすことができなかった。




「あの時、嫌な予感がしたんだ。だけど信じようって思った。
……お前が俺のそばにいてくれるなら!」



そう叫ぶと、コウタロウはあたしが胸もとで抱えていたボストンバッグを強引に引っ張った。



「やだっ……やめてよ!」


「他の男のところになんか、行かせないからな!」



力任せに引っ張られ、あたしは地面に転がる。


投げだされたバッグが衝撃で口を開き、あの卒業文集が少しだけはみだした。



ジリ……と地面をこするように、コウタロウのスニーカーが近づくのが見えた。



「なぁ、俺、何か悪かったのか?」



あたしの心臓を貫くような、コウタロウの瞳。



「どうすれば俺を選んでくれた?」



抑える術もなく、震える肩。



「こんなに好きなのに」



あたしをえぐる、言葉たち。




それは、罰を受けるべきあたしへの、当然の痛み。