「やめてッ!! コウタロウッ!!!」
空気を裂くようなあたしの叫び声。
ふたつの顔が同時にこちらを向く。
レオとコウタロウはお互いの胸もとをつかみ、どちらの唇にも血がにじんでいた。
「……嘘だと思ってた」
あたしに向けられた、コウタロウの声。
地の底から聞こえてくるように低く、いつもの穏やかさのかけらもない声。
あたしは唾を飲んだ。
カラカラに渇いた喉が痛かった。
「さっき、知らない男から電話があったんだ。今すぐさくらの部屋に向かえって……」
知らない男から、電話?
「あ……」
あたしは震える手で口もとを押さえる。
脳裏によぎった、青白い男の顔。
――成瀬!
「ここに来れば、さくらの本当に好きな男がわかるって言われて……けど信じてなかった。今、こいつの姿を見るまでは……!」
言葉の終わりと同時に、コウタロウはまた1発、レオの右ほほを殴った。
よろめくレオの体を突き飛ばし、コウタロウはあたしに詰め寄った。