人ごみをかき分け、追いかける。
レオは立ち止まり、あたしの方を向いていた。
すごく哀しい瞳。
まるで、これからあたしが言う言葉をわかっているかのような、哀しい瞳。
「……好き」
吐き出さずにはいられない想いを、言葉にする。
「好きなの」
「うん……」
「レオが好き」
「うん……」
泣いちゃダメだ。
そう思っているのに、目の奥が熱くなっていく。
あたしは涙がこぼれないように、上を向いて何度も好きと繰り返した。
伝わらなくてもいい。
今、言葉にして言わなければ、あたしはつぶれてしまう。
この痛みできっとつぶれてしまうから。
「好きなの……」
何度目かわからない言葉をこぼした瞬間、あたしの体はレオの細い腕に包まれた。