空港の中は出張のサラリーマンや旅行者で賑わっていて、一気に現実に引き戻された。
「さくら、この後どうするの? 俺は店に戻らなきゃダメだから、さくらが家に帰るなら同じ電車だけど」
“店”という言葉に、あたしは耳をふさぎたくなる。
わかってる。
わかってるけど、聞きたくない。
「……あたし、もう少しここにいるよ。レオは先に行って」
「わかった」
歩き出すレオの後ろ姿を、あたしはまばたきもせずに見つめた。
レオの小さな体は、雑踏の中にすぐに隠れ見えなくなってしまった。
「レオ……っ」
思わず名前を呼んだ。
聞こえるわけがないのに。
……どうして、東京はこんなにたくさんの人がいるんだろう。
あたしとレオの間を次々に人が行き交って、あの子を見失ってしまう。
みんな、レオの姿を隠さないで。
さっきまであんなに近くにいたのに。
手をつないでいたのに――
「レオッ!!」
あたしは大声で叫んだ。
かすかに見えた金色の頭が、ピタリと止まったのがわかった。