あたしは強引にレオの腕をつかみ、タクシーを止めて乗り込んだ。
何が起こったのかわからないレオは、あたふたしている。
なんだか、いつものあたしたちの立場が逆転したみたいだ。
「石垣島って、どうゆうことだよ」
「だからぁ……」
あたしはレオを横目で見て、にやりと笑った。
「別にセックスするだけが仕事じゃないでしょ?
明日の夕方まで、あんたのこと買ったから。
付き合ってよ、沖縄」
「………」
突然の展開に、口を開けたまま放心するレオ。
そして
「さくらって……、やっぱ、面白い奴」
ぽつりとつぶやいて、笑った。
その笑顔を見てあたしも笑った。
運転手のおじさんはミラー越しに、不思議そうな視線を向けている。
狭いタクシーの中は笑い声に包まれたまま、羽田に向かった。
約3時間で、石垣空港に到着した。
飛行機を降りたとたん、東京とは比較にならない暑さに驚く。
あきれるくらいに強烈な太陽。
空も植物も限りなく原色に近い。
ここは、南国だ。