“鳩が豆鉄砲を食らったような顔”
っていうのは、こうゆう表情を言うんだろうか。
待ち合わせ場所に現れたあたしを見て、レオはもともと大きな瞳を、さらに真ん丸に見開いた。
「え、えっと……」
「あたしが予約入れたの」
レオが聞きにくそうにしていることを、先にさらりと言い放ってみせる。
レオは長いため息をつきながら、首をかしげた。
「予約って……。さくら、わかってる? 俺の仕事」
「当たり前じゃない」
その言葉に、レオはもう一度ため息をつく。
「あのさ、前にも言ったけど、俺、仕事以外でセックスする気にはなれないんだけど」
「今日はちゃんと店を通したんだから、これも仕事よ」
「そういう問題じゃ……」
頭をかきながらうなだれるレオ。
そんな彼の前に、あたしは2枚のチケットを差し出した。
「何これ」
レオが顔を上げる。
「……航空券?」
「そう。石垣島行き。出発まであと2時間だから急ぐよ」