それは、孤独な物語。






「まさか貴女から誘ってもらえるなんてね」



そう言って、男はロックのブランデーに口をつけた。


黄金色の液体の中で氷がゆらゆら浮かび、金平糖のように輝いている。



あたしは軽く会釈をしてから話し始めた。



「あなたに、どうしても聞きたいことがあって。
おわかりでしょう?……成瀬さん」



あたしのその言葉に、男はフッと冷たく笑う。



「ハヤトのことですね?」


「………」



黄色みを帯びた薄暗い間接照明。雑居ビルの地下にひっそりと潜る、陰気なバー。


話がしたいと電話をかけたあたしに、成瀬が指定してきたこの店は、これから始まる会話にぴったりのような気がした。


きっと、明るい話ではないはずだから。



あたしはどうしても知りたかった。


レオのこと。

彼の過去を。



知ってどうにかなるものじゃないのはわかっているけど

それでも……。