コウタロウは何も言わず、あたしをベッドまで運んだ。
世の中の恋人同士が皆そうするように
あたしたちもふたりの歯車が狂いかけた時は、体を重ねることでそのつど修正してきた。
昨日、別の男を受け入れた体が、今日は恋人を受け入れる。
そういえば明日は、客を呼ぶ日だったっけ。
あたしは今までだって、こうして男を受け入れてきた。
なのに、本当に欲しい人の体はもらえない。
欲しいのに。
こんなに欲しいのに。
手形がつきそうなくらいの強い力で恋人に両肩をつかまれ、せかされるように絶頂を迎える今でさえ、
こんなにレオが欲しいのに。
「泣いてるの?」
あたしの上でゆっくり動きながら、心配そうにコウタロウが言った。
泣いてるつもりはなかったけど、確かに哀しいような、泣いているような気がしたから
あたしは自分のほおに触れてみた。
そこには涙の痕跡すらなくて
ただ冷え切った皮膚があるだけだった。