彩未が彰の名を呼ぶたび、美月は耳をふさぎたくなった。

とうとう我慢できなくなって、美月はipodを聞きながら目をつぶった。

ホテルからテレビ局までは近かったから彰と彩未を見なくて済む時間が減っていった。

テレビ局に着くと早速撮影が始まった。

日本では撮り終わらなかった明と彩未のもめるシーンだ。

付き合ってる二人がもめるなんて、現実にはあり得ないことだった。

だから同じシーンを何度やっても嘘っぽくなってしまい、何度も何度もカットされていた。

「じゃあシーン9行くよー!
一発で決めてよ!
一発で!」

監督のいらだちがピークに達していることは何となくわかる。

「はい!
お願いします!」

彰と彩未は大きい声で答えた。