私達は見つめ合っていた。











それはたったの1秒程度だったかもしれないし、

もしかしたら数十秒という長い時間だったかもしれない。











たくさんの若者が出入りするこのビルで、

たくさんの人達が行き来するこの入口で、

なぜ彼と目が合ったのかはわからない。














本当に初めての経験だった。














目が合っている間、

あんなにも音楽や人の声で賑わっている中で、

一瞬、時が止まっているような感覚だった。














もちろんその時はカッコイイとか素敵とか、そんな感情はなく、

何故かただ『無』になっていた。