「でも、お父様たちはそんなこと気にするような人たちじゃ……」
「わかってる。
でも……」
そっと私の頬に手を伸ばす。
「可愛い一人娘を、そんな出自のヤツに、おちおちくれてやるような人でもないだろう……?」
伸ばされた手は、私に触れることはなかった。
触れそうな一歩手前でそっと下ろされ、手を握り締めていた。
「朔夜……」
「あの収賄事件があってから、俺は荒れていった。
女なんて、はいて捨てる程寄ってきたし……
高価なものも貢がせた」
時計も、バイクも、女に買わせた、と言う朔夜。
言葉を出すたびに、まるで血を流しているようだった。