気まずい空気が流れた。



「私、行かなきゃ」



誰に言うともなく呟き、私も走り去ろうとした。



「綾香!」



朔夜が私を捕まえる。



手で。

声で。

存在で。



「綾香。私、ちょっと行かなきゃ。

綾香はセンパイと話した方がいいよ」



奈津紀もどこかへ行ってしまった。



人ごみの中に、二人。



周りの喧騒が、静かになった気がした。