2人きりの時間は、早いもので。
もう校門前に着いてしまった。

「あ!紫苑くんっ!」

此方へ走って来て、紫苑に抱き付く女の子。
―秋音 奏恋。
セミロングの茶髪に、小柄な身体。
顔も凄く可愛くて、『動くお人形』といった感じ。

「あ…由凛もおはよー!」

彼女はそう言って私に手を振った。
私も振り返す。
私と奏恋は、一番の仲良しなんだ。

「…じゃあ、紫苑くん行こっか」

そして奏恋は紫苑の腕をぐいぐい引っ張る。

「はいはい……」

紫苑は苦笑すると、私に「じゃーな」と言って背を向けた。

「うん、バイバイ…」

心なしか彼の背中は、凄く遠い気がした。

そんな気がするのも、自分で納得できる。
紫苑は――奏恋と付き合っているから。

私が紫苑を好きになり始めた頃、奏恋が告白した。
2人が付き合うなんて……その時の私は考えもしなかった。


昇降口と階段の間にある鏡をみつめて、溜息を吐く。

「やっぱり…見た目で決まっちゃうのかなぁ…」

思い切り舌を出して「べー」とやると、私は階段を駆け上がった。