「遅いんだけど」
「ごっ…御免ってばぁ……」

朝っぱらから冷たく怒られる私。

怒ってるのは 紫苑。

家が近くて、毎朝一緒に登校している。

「毎朝毎朝…遅刻するのが好きなのか?」
「ち……違うよっ!」

こんな他愛の無いやりとりだけど、私はこの時間が好き。

だって…誰だって、好きな人と一緒に居たいって思うでしょ?

私は紫苑が好きだから…しかも一緒に登校出来る幸せを噛みしめたいから。

かと言って遅刻するのは態とじゃない。

枕元に山の様に積まれた目覚まし時計を見れば、誰だって判るだろう。

「…早く行くぞ」
「はーい…」

「早く」とか言いながら、彼は何時も歩調がゆっくり。

それが私には、最高に嬉しかった。

私は彼と桜並木を交互に眺めながら、微笑を浮かべた。