彼の家の領土の多くは、ライストと隣り合わせにある。
 
 そのため、戦争もなく平和な現在はアイスラとライストとの間の商品の半分くらいが、ブラウドール家の領地を通り、またそのためブラウドール家は二国間の商いを取り締まることによって、貴族としての地位を高めていった。
 
 現在は平和な時が流れているが、いつ何時国同士の戦が始まるかわからない。
 
 もしライストとの間に戦争が起きたのなら、ライストの隣に位置するブラウドール家領地が戦場になることは必死。
 
 
 平和な時は商品を扱うさいの道順などの確保、戦争の場合地理の把握は必ず必要となる情報の一つである。
 
 
 だからこそ、ブラウドール家の後継ぎであるセリオンは、実際この地を目にし完璧に正確な地理を把握するため、王都からわざわざ来たのだ。
 
 供の者を連れ、将来自分の物になる領地を一通り回ったあと、ライストに入り様々な商品になるような物などを、見に行く予定をたてていた。
 
 
 だが、彼は国境を越えライストに入る直前の日に、散歩がてら外にお忍びで一人で出たのだった。
 
 ブラウドール家の後継ぎとして、土地の者の過剰な接待に嫌気がさしたのである。