「……さて」
 
 
 老人――この屋敷の執事は、疲れたようにため息を吐き頭を上げる。
 
 そして青年に来るよう合図をし、説明を始めた。
 
 
「この“荷”は今までのものと違う。
 お前達と同様の対応をさせるが、こやつは商品じゃ。
 傷一つ、つけてはならんぞ。
 仕事は……まぁ、ウィンかアリアのを手伝わさせるか。
 だが、お前がしっかりと面倒を見、態度を覚えさせろ。
 こやつが何か問題を起こせば……わかっておろうな、フレイ」
 
 
 執事は淡々と言い、青年・フレイの返事も聞かずに歩きだす。
 
 彼もそのことに疑問を持たず、無言で下を向いたまま“荷”に手を伸ばそうとした。
 
 その時、執事が軽く振り返る。
 
 
「あぁ、そうそう、それとだな。
 そやつには、お前と同じ仕事をさせるな。
 渡す時、綺麗なまま渡せるようにの」
 
 
 言うことだけ言った執事に、フレイはただ沈黙を返すのみ。
 
 執事もそれが普通なように、フレイを無視して屋敷の中へ入っていった。