カナカナカナ…
蜩(ヒグラシ)の声が聞こえる。
日の暮れ始めた街はセピアのフィルターがかかったようで、蜩の声も重なって、なんだか物寂しいような懐かしいような気分になる。
僕はこの時間帯が一番好きだ。
夕立が降った後の空気は、湿気を含んでいて今だ昼間の熱を残している。
僕は家路へと急いでいた。
僕に両親はいない。
僕が生まれてすぐに交通事故で死んだらしい。
今は親戚の叔母の家でお世話になっている。
叔母は優しい人だった。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
設定されていません
読み込み中…