カナカナカナ…









蜩(ヒグラシ)の声が聞こえる。


日の暮れ始めた街はセピアのフィルターがかかったようで、蜩の声も重なって、なんだか物寂しいような懐かしいような気分になる。



僕はこの時間帯が一番好きだ。




夕立が降った後の空気は、湿気を含んでいて今だ昼間の熱を残している。


僕は家路へと急いでいた。



















僕に両親はいない。

僕が生まれてすぐに交通事故で死んだらしい。


今は親戚の叔母の家でお世話になっている。





叔母は優しい人だった。