綺麗に手入れされた庭を突っ切ると、そこには小さな温室があった。
そこから何か聞こえる。

促されて中に入ると、温室の隅に壊れかけたドールが、歌を歌っていた。
元は綺麗なウェーブがかかっていたのだろうブロンドの髪はボサボサで、ドレスもボロボロ。
肌も、あちこちにひびが入って今にも崩れ落ちそうだった。
 しかし、歌を紡ぐ声はとても綺麗で、硝子で出来た碧色の瞳は真っ直ぐに空の彼方を見据えていた。

「彼女の作り主は、病死した娘さんの代わりとして彼女を作りました。彼女を作ってすぐ重い病気にかかり、亡くなる前に私の所に彼女を預けたんです。」

 娘さんを失った悲しみの中で生まれた最愛の末っ子として。
涙として溢れる愛情をいっぱい受けて生まれた人形。