蒸し暑いアトリエ。
溶き油と油絵の具の匂い。







「ふごぁ〜〜〜〜〜〜っ」
「ロコちゃんロコちゃん。なんか素敵な暗灰色のオーラが出てるよっ♪」


 未だ白いキャンバスの前で腕を組みながら唸る私の名は広川 芦子(ヒロカワ ロコ)。青春真っ盛りの高校2年。


後ろから声をかけてきたのは親友木々名 深美(キギナ ミミ)。通称きーちゃん。
ひょりと細い長身で肩までの綺麗な茶髪(地毛)とくりくりした目が可愛い。

 私が所属するこの美術部で出されている夏休みの課題は油絵。
テーマは『心』。

わけわかんねーよ!
思春期なめんなよ!





「はー…やっぱり夏休みに入る前までに下書きくらいはした方が良いよねー…。」


何も描けなかったのに疲れるばっかりで帰路に着く。
学校規定の長さに合わせてある制服のスカートが精神的な疲れで足に纏わり付いて重たく感じる。

 そもそも『心』なんてテーマが曖昧過ぎやしないかい?シュンちゃんや。(美術部の顧問。あまり学校に来たがらない52歳。)

「…明日クラスの人達に相談してみよー…。」


 とりあえず、意見を聞くのに手っ取り早いのと言えば…アンケートかな?