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「あれ…」

「うん?」


沖田は人で賑わう街中の一点をじっと見つめながら首を傾げる。


優真と沖田、その他数名は只今巡察中だ。

湿度が高くじめじめとした京での夏の巡察は、少々辛いものがある。隊士らも「暑い、暑い」が口癖になる程。


「いや、今佐々木が女子と歩いているのを見たような…、見なかったような…?」

「は?」

「いや、私の見間違いですね」


そんな中、暑さを感じさせない爽やかさを見せる沖田は頬をぽりぽりと掻く。


(佐々木って……あぁ、)


「ドジの佐々木ね」


何とも可哀想な佐々木。
今だに優真の中で佐々木、イコール、ドジの数式が成立している模様。


「ドジって…佐々木のことですか?」

「そう。この前何もない処で転けたし」

「それはたまたまですよ……って、あっ。…そう言えば昨日隊服を裏返しに着てましたね…」

「……」

「……」


無言になる二人。
その様子に他の隊士は何事かと怪訝そうな表情を見せる。





「あ、沖田先生に立花先生」


その異質な空間に一際明るい声が降ってきた。音色からその声の主が妙にうきうきとしていることが判る。

優真と沖田は自身の名を呼ばれ、反射的に振り向くと。


「「あ、」」


そこには見知った顔が立っていた。

それも、満面の、この世の幸せを全て吸い取りました、と云わんばかりの笑みで。