照れているのか、佐々木は頭を掻きながら笑みを洩らす。それはまるで幼子の様な笑み。


林以外の京に来てから入隊してきた隊士と剣の指南抜きで話すのは初めてだった優真は、最初は敬語だったが、いつの間にか普段の口調に戻っていた。


「それ、冷やした方がいいと思うよ」


そう言って優真は佐々木の額を指差すと、佐々木は慌てて手をブンブンと横に振り、


「だ、大丈夫ですって!このくらい、何てことありません」


(う〜ん、これじゃあ何言っても聞かなそうだなぁ)


そんなことを思った優真は怪訝そうな表情をする佐々木を尻目に、すたすたと道場を出て行く。



暫くして戻ってきた優真の手には何かが握られていた。

佐々木の前まで来ると、スッとそれを差し出す。


「冷やして」

「あ、………手拭い…。もしかしてわざわざ…?あ、ありがとうございます!」


優真が手にしていたものは、冷たい水が染み込んだ手拭いだった。


嬉しそうに笑う佐々木を見て、優真も自然と微笑む。


佐々木の笑顔は周りを和ませる、


そう優真は思った。




「「お早うございまーす」」


道場に明るい声が響き渡る。

どうやら他の隊士も起きたらしい。一人、また一人と道場へ入ってきた。

それを合図に優真と佐々木、二人の会話は終了し、優真は指南の準備、佐々木は他の隊士の元へ行くのだった。