「俺も最初は疑ったで?こんな物騒な処で優真みたいな奴がやっていけるのか……、でも優真は巧くやってたわ」


山崎はククッと可笑しそうに笑いながら続ける。


「一度優真に訊いたことあんねん。“何でこないな処で刀を奮っとるん?”って。そーしたら何て返ってきたと思うか?」

「……さぁな」

「“守りたいものがあるから”………そう言ったんや。在り来たりな答えかもしれんけどその時の優真の目、まるで何度消そうとしても消えん炎の様に熱く燃えとったわ。それ見て“あぁ、こいつは本物やな”って俺は思うた」

「…それを俺に言ってどうしたい」


判ってるくせに、そう言いたそうな山崎の表情を受け斎藤はサッと顔を背けた。

それを見た山崎はやれやれといった表情をする。


「優真のことを認めようとする自分がいる、やけどそれを認めたくない……今の斎藤の心ん中はこんな感じってとこか」

「そ、そんなわけ…」

「ない、と言い切れるか?」


その言葉に斎藤は無表情を崩し、苦い表情に変わる。斎藤のこんな表情は珍しい、いや、初めてではなかろうか。


「斎藤さんは堅いからなぁ〜。普通守られる立場の優真が守る側におる、それも刀を持って。それに抵抗感があるんやろ、それはしゃーない」

「奴は刀を、…持つべきではない」

「そやな。それは誰もが思うことや。けどな、あいつ、立花優真という人間と真っ正面から接するんや。そうしたら……その考え変わると思うで」


それは山崎の経験から言っているのだろうか、ふと斎藤はそんなことを思った。

一方の山崎は斎藤の横を通り過ぎ障子に手を掛け、一度止まる。



暫くの間。



どうしたのかと斎藤は山崎の背中を黙って見つめる。



───そして、



「斎藤さんは、まだ真っ正面からあいつを見てないねん」


その言葉を残し、山崎は部屋から居なくなった。パタンッ、とやけに部屋に響いた障子の閉まる音。




部屋には何とも言えない空気が広がっていた。