翌日、何時も通りの、まだ陽も顔を出していない早朝に起きた優真は、着替えて井戸へ顔を洗いに向かう。



──と、



そこには先客がいた。





「永倉さん、お早うございます」

「…おぉ、優真か。お早う」


そう言って永倉は疲れた表情で、冷たい水を浴びた顔を手拭いで拭く。


(なんか永倉さん、疲れてるなー…。そういえば、昨日の夜は酒宴だった筈じゃ?朝まですると思ってたけど)


優真はふと疑問に思った。

芹沢は夕刻から酒を飲みに出ると朝まで帰宅しないのが恒例。芹沢を見張る為に参加した永倉が早朝からここにいることはおかしかった。


優真は顔を洗い終えると手拭いを顔にあてながら、ぼーっと意識を何処かに飛ばしている永倉に訊ねる。


「永倉さん、何でここにいるの?」

「……ぇっ…はぁ!?俺がここにいちゃ悪いのか!?」


(いや、そうではなくて。言い方が悪かったかな)


「違うから。昨日の酒宴はどうだったのかな、って」


内心、少し面倒くさいと思いながらも優真は言い方を変える。

すると、永倉は納得したような表情を見せた後、すぐに表情を曇らせた。


「…あぁ。それが芹沢さん、……まぁ、分かるだろ?」

「例の如く暴れたんだね」


優真はやっぱりといった表情で、行かなくてよかったと心の奥底で思った。