一方、優真が芹沢達に勧められるままに酒を呑んでいる頃、屯所の大広間では隊士達が夕餉を楽しんでいた。







その中で一人、これでもかというほど口一杯に食べ物を詰め込みまくっている者がいる。


「信太郎〜そんなに急いで食べたら味わからねぇぞー」


箸をせわしなく動かして次々と口へ運ぶ信太郎に見兼ねた原田が苦笑いしながら言うが、信太郎は原田を一瞥しただけで何も応えない。

まあ、応えようとしても応えられる状態ではないのだが。



 ガチャンッ



「えっ、おーい…ってあいつ行っちゃったよ…」


食べ終えたのか、信太郎はすくっと立つとそのまま足早に何処かへ行ってしまった。

そんな信太郎に声を掛けた永倉だったが、呼び止める事は無理だった。



「どうしたんでしょうねぇ。信太郎君、難しい顔をしていましたが…」

「確かに……って、そーいえば総司、優真は?あいつが夕餉の時にいないとか初めてじゃねーか。体調でも悪いのか?」

「あぁ、違いますよぉ。出掛けてしまったんです。何処に行くかは訊きそびれちゃったんですよねぇ〜」



優真がこの場にいない事に気付いた永倉が沖田に訊ねると、どこか不満そうな表情で応えた沖田。

恐らく、話し相手である優真が居ないことでつまらなく感じているのだろう。

隊務ならば沖田も仕方がないと思うのだが、そういうわけではない。



その後の沖田はぶつぶつと優真のことを言いながら食べていたという。

後日、その様子を永倉達から笑い話にされることを今の沖田はまだ知らない。