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「此処か…」


優真は平間に言われた茶屋の前にいた。

辺りはもうすっかり暗くなっており、通りには人も居ない。

優真は深く息を吐くと決心したように茶屋の中へと入って行った。





「芹沢さん、立花です」


店の主人に案内された部屋に一声掛けると、入れと愉快そうな声が返ってきたので優真はススーと襖を開ける。


うわ……何なの、これ。
もうできあがってるよ…。


優真は目の前の光景に目を細めて呆れた表情を見せる。

そこには芹沢、新見、平間、平山が盃を持って豪快に酒を呑んでいた。辺りには空の徳利等が転がっている。


「突っ立ってないで早く座らんか!」


芹沢が嬉々として大声をあげた。
はい、と優真は芹沢の近くに行くと静かに座る。


「ほれ、呑め呑め!」


芹沢の酒を進める声に、優真の近くに座っていた平間が強引に優真の手に盃を持たせると、それにコトコトと酒を注ぐ。



もう後戻りはできない。
芹沢が納得するまで呑ませられるだろう。



───よし。



心の中で覚悟を決め、優真は酒独特の香りを感じながら盃に口をつけた。