「あたしが英語教えてあげる、って言ってんの。本場アメリカでの7年間の海外生活は伊達じゃないよ。たぶん米田先生より英語が分かってると思うし」

「おっ、さすがは帰国子女♪」

「Sure!(シュアー!) 大船に乗ったつもりでド~ンと任せなさい♪」

「では、ひとつよろしくお願いします、クリス先生♪」

冗談っぽく言って、ペコリと頭を下げる彼。

「プライベートレッスンで、みっちりしごいてあげるから覚悟しなさい♪」

「ホラ、そこウルサイ!」

教室の中から米田先生のヒステリックな声が飛んでくる。


廊下に立たされたのなんて、17年間の人生の中ではじめての経験だ。

なんかマンガとかで見て、廊下に立たされるっていうsituation(シチュエーション)にはマイナスのイメージしかなかったけど、実際立たされてみると案外楽しくて、なんならこれからもちょくちょく立たされてみたいとさえ思う。

そんなことを思いながら、ふと目を下ろすと、さっきよりふたりの影が長くなってた。

ふたりのココロの中までポカポカと暖めてくれる午後の太陽が、少しずつ西に傾きはじめているんだろう――――――