「いい? もし約束やぶって“ぬけがけ”して、自分だけ恐竜の名前を付けたりしたら、こうだからねっ」

…と、ロムの手の甲を思いっきりつねる。

「イタイ、イタイ、イタイっ!」

腕力では男子に勝てないけど、指先でつねるくらいなら女子にもできる。

ロムに言わせれば、あたしのツネツネは、爪の先で小っちゃく皮膚をつねるもんだから、クラスの女子の中でイチバン痛いらしい。

…って、そんなに女子からツネツネされてるワケ? ま、いじられキャラではあるけど。

「わ、わ、分かったよ、ちゃんと約束は守るからっ…」

ロムのクリッとした黒目がちの瞳が、ちょっと涙目になっていた。


けど、結局、その約束が果たされることはなかった。

そのあとすぐ、あたしがNYに行ってしまったからだ。


あれから7年が経つ。

ロムはもう新種の化石を見つけたのかな?

近所のジャンっていう恐竜好きの男のコに…、

「ニッポンで新しい化石が見つかったか知らない?」