まぁねぇ…。
キクチ・ヨーコがロムのカノジョになることを認めたくないあたしが確実にいる。
だけど、ロムが望むなら、ロムの恋を全力で応援してあげるのが、ロムのお姉ちゃん代わりとしてのあたしの役割ってヤツなのかもしれないと思うあたしもいる。
ここはあたしがオトナになって、本当にロムのことを思うんなら、ロムにとってなにがイチバン幸せなのか、ちゃんと考えてあげないといけないんだよね。分かってる。
「しょーがない、お姉ちゃんが一肌脱いでやっか。…ったく世話の焼ける弟だよ」
自転車で走る向かい風の中、リップステッィクを塗った唇がそうつぶやく、まるで自分自身に言い聞かせるように……。
それにしても痛い。
痛すぎる。
胸の奥のシクシクするような痛み。
そして、もうひとつの痛み。
お昼ごろはあんなに太陽がポカポカだったのに、今はスッカリ日が傾いてしまい、2月本来のピンと張り詰めた冷たい空気が、自転車を走らせるスカート丈ひざ上25センチのむき出しのナマ足をムチのように情け容赦なくピシピシ叩いてはじいてたんだ――――