「ご、ゴメン。じゃあ、アンドレ…じゃなくて安藤 巧だったね? 巧で…いい?」


「あぁ。じゃ、クリスも名前、教えてくれよ」


「あたしは“愛”、栗栖 愛」

なんの躊躇もなく、あたしはそう言ってた。

愛(アイ)って名前、外国に行ってから嫌いになってたし、ユーたち幼なじみの女のコだけにしか「アイ」って名前で呼ばせてなかったのに、このときのあたしはなんの躊躇もなく、すんなりと彼に名前を教えてしまっていた。


「そっか、愛か。カワイイ名前だな」


「カワイイ……名前……」


だけど、そのひとことでは恋に落ちなかった。

だって、昼間、美容院で「綺麗だ」って、「天使みたいだ」って言われた時点で、もうとっくに恋に落ちてたから……。


「そんじゃ、名前、教えてもらった、ってことであらためて言わせてもらうけど、愛が死なずに生きてること……それが俺は嬉しいんだ」