「フツーに名前で呼べばいーじゃん。下の名前は“なにちゃん”っていうんだ?」

「えーっ、下の名前は言いたくない」


“愛(アイ)”って名前は、ユーや幼なじみの女のコ以外には呼ばれたくない。


「下の名前を教えるのがイヤって言うなら……クリちゃん……いや、クリリンでいいよな? いーじゃんマリリンみたいでさ♪」

「うわ、ダッサ…」

あたしは彼のネーミングセンスを疑った。

「呼び捨てでいいよ、クリスで…」

ため息つくようにして言うあたし。

「なんだよ、結局ソレかよっ」

ガクンと、コントみたいにコケるりアクションをする彼。

「そーいえば、あなた美容院で“アンドレ”って呼ばれてたよね?」

「アレは俺の名前が“安堂”だから」

「下の名前はレイ? レン?」

「巧(タクミ)だけど…」

「えっ? あたしはてっきり“アンドウ・レイ”とか“アンドウ・レン”だから、アンドレって呼ばれてるのかと思った。安堂 巧(アンドウ・タクミ)なら“アンタク”じゃん」