「でも、おかげで早退できたんじゃん♪」
「美容院のお客さんって仕事帰りに来る人が多いから、ホントは夕方からが忙しいし、俺、ボスや仲間の美容師にけっこー後ろめたさを感じてんだけどな…」
軽く凹んでいるみたいな彼。
そんな彼を元気付けさせるために、あたしはワザと明るい感じでこう言った。
「ごめんちゃい! でも今夜0時であたし、死んじゃうしぃ、こんなワガママを言うのも今回が最初で最後だよぉ♪ 安心してっ♪」
「ハァ…キミってヤツは」
ため息をついて言う彼。
「たしか“クリスちゃん”っていったっけ? 可愛い名前からは想像つかないような強烈キャラだよな」
「クリスチャンって、あたし、帰国子女だけど仏教徒だよ」
「はいはい、分かった、分かった。じゃ、あんて呼べばいい?」
「My sweet angel(マイ・スイート・エンジェル)とでも呼んでもらおっかな♪」
「長いよっ。それに、俺が“天使みたい”って言ったのは、あくまでキミの髪の毛に天使の輪っかができるからであって…」
「じゃ、エンジェルだけでいいよ」