「アシスタントとはいえ、俺も髪の毛に関しちゃプロだ。プロの仕事を見せてやる」

彼の目が土曜日の午後の日差しを受けてキラリと輝いた。


まずはムースを“そんなに使うの?”ってくらい多めの量でジュワッと出す彼。

その一挙手一投足を鏡越しにガン見しているあたし。

大きなピンポン玉みたいなムースを、ガムまみれの髪に当てると、ムースが髪にまんべんなくなじむようにモミモミと揉む彼。

「そんなんでガムが取れるワケ?」と、ちょっと不安げに思って訊くあたし。

「たぶん大丈夫だと思う」と、作業をやりながら答える彼。

「“たぶん”って…」と、ますます不安になるあたし。

「ダメだったら、そんとき対策を考えればいいだけだろ」などと言いながら、ガムがからんで束になっている部分を少し手に取って、目の細かいクシを少しずつ入れて、こそぎ取るようにしてとかしはじめる彼。

次の瞬間、思わず「なんで!?」と驚きの声を上げるあたし。

ムースを塗った髪をとかしたクシの歯の間に、ガムのカスが付いていたからだ。

「魔法じゃないぜぃ♪ ムースがガムの成分を溶かすのさ~♪」と自慢げに言う彼。