「いい? わざわざあたしが伝言ダイヤルで相手を見つけてあげたんだから、約束の時間、約束の場所にちゃんと行ってきてよね」
「………」
「ねぇ、聞いてる?」
「………」
本当はあのオンナと話したくなかった。
「ま、返事したくないならしなくてもいいけど、とにかくやるべきことは、ちゃんとやっといてね。もし、やらなかったら、どうなるか分かるでしょ? じゃね、バイバイ」
言い終わるなり、一方的に電話を切るあのオンナ。
だけど、あたしは呆然として、すでに切れてしまっているケータイを耳にあてたままの状態で、空間の1点を見つめ続けていた。
世の中には“援助交際”とかいって、お金のために見ず知らずの男の人とだってヘーキで寝ちゃうようなコがいくらでもいるもんだけど、あたし的には信じられない。
本当に好きな相手と、そーいうことするのだって、死ぬほど勇気がいることだと思う。
それでも、その人のことが本当に好きだから……だから勇気を振り絞ることができるんだと思うし、本当に好きな人だからこそ、自分の一番大切なものをあげることだってできるんだと思う。