「shit!(シット!)」

あたしは叫んでロムの背中をグーで叩いた。

「ロムのバカっ……キミはやさしすぎるよっ……やさしすぎて、逆に残酷だよっ……」



「ハイ、そこの学生、自転車の二人乗りはしない!」



突然、大音量のマイクボイスで女のヒトの声が言った。

声のしたほうを見ると、路肩に停めたミニパトの中で若い婦人警官がマイク片手に、鬼のような顔であたしたちをにらみつけていた。

「やべっ、クリス、逃げるぞっ」

「ふた手に別れよう」

そう言って、自転車の荷台から飛び降りるあたし。

「ここからなら、もう走って行っても学校には遅刻しないから」

「そっか。じゃ、俺はコッチ」

向かって右の道に自転車のロムが入る。

「じゃ、あたしはコッチ」

向かって左の道にあたしが駆け込む。

「待ちなさい!」