「………」

「だからロム……お菊じゃなくて、あたしを選んで…あたしのことを好きになって、お願い……お願いだから」

そう言って、あたしは彼の背中にチョコンとおでこをくっつけた。

「彼女にはロムの良さが分からないんだよ。毎日、毎日、こうやって送り迎えをしてくれたのに、ロムのやさしさに何も感じないなんてホント、unbelievable(アンビリーバボー)だよ……」

「………」

「あたしなら、ロムのやさしさ全部ひとつ残らず受け止めるよ。受け止めて10倍返しで、ロムを幸せにしてあげるし」

「………」

「キスだっていっぱいするし、ロムが望むならソレ以上のことだって…させてあげても後悔しないから……」

「………」


ここで自転車が静かに止まった。

“どうしたんだろう?”と思って、顔を上げると、歩行者用の信号が赤になっているのが分かった。


「クリス……」

おもむろにクチを開くロム。