芝居がかったセリフ回しで、頭を抱え、その場にしゃがみこむ。
キィーッ…
一度は知らんぷりして通り過ぎた彼が、7、8メートル先のところで自転車を止めてくれた。
「クリスの自転車……カギかけて、そこに置いとけよ……」
前を向いたまま、コッチを見ないで彼が言う。
「え?」
「乗れよ、後ろ……」
「いいの…?」
恐る恐る訊く。
「時間がないんだ、二度も同じこと言わせるな……遅刻しても知らないぞ」
「ありがとう♪」
あたしは自分でパンクさせた自転車を、通行の邪魔にならないところまで動かすと、カギをかけて、ロムの自転車の後ろに横座りで乗った。
ココに……、
ココに今まではキクチ・ヨーコがずっと座ってたんだ。