「気がついたら、リコしか見えてない自分に気づいた」

そう言った後、俺はビールを飲んだ。

俺たちの間に流れたのは、何故か沈黙だった。

桃坊、何か言えよ!

言った俺がすっげーバカじゃん!

俺の心の底からの思いが伝わったのか、
「ふーん」

桃坊が言った。

「な、何だよ」

そんなあいづちを打った彼に戸惑っていたら、
「ずーっとリコ姉ちゃんにゾッコンだったから、彼女いなかったんだなって思って」
と、桃坊が言った。

ぞ、ゾッコン…。

今どき使うか?

その言葉を知ってた桃坊も桃坊である。

そもそも、いつの時代の言葉なんだって言う話だよ。