こんな疎開につかわれそうな田舎にも中学校というものはちゃんとあるようで、僕はそこにバスで20分かけて通う。

ここの暮らしは決して辛くない。ちょっと、いや、かなり虫が四六時中お出ましなのが気に障るだけだ。

……やっぱり正直気持ち悪い。
夏は三倍だという。…死ぬ。


クラスメートは都会育ちが珍しいのかやたら話し掛けてくるが、いかんせん、方言がはげしすぎて半分も解読できなかった。とりあえず愛想笑いしておいたら満足そうに散っていった。
愛想笑いはスゴイ。
そして方言は日本語じゃない。


「水月く−ん。ちょっと手伝ってくれるー?手が離せないのー。」

精神的にくたくたになって帰ると、台所からおばあちゃんに呼ばれる。毎日呼ばれる。
ここにきてわかった。
おばあちゃんは母さんの親だ。

「なに?何をやればいいの?」

「おじいちゃんが釣ってきた魚なんだけどねぇ。水月くん、捌いてくれる?」

「…うん。」

要するに手を汚したくないと。

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