家の中はやっぱり古くて木の匂いがした。でも予想してた汚いという印象はなく、どこか懐かしいと感じた。

それにしても身体が痛い…

ふらふらと荷物をすべて運び込むと母さんの楽しそうに笑う声が聞こえた。

父さん、母さんと別れて正解だったかもね。僕も女の人は気をつけて選ぼう。

「水月ー!!まだなの?はやくしなさーい!」


どうしたらここまで自由に生きられるのだろうか。
怒るのも馬鹿らしくて、むしろ呆れる。

ため息をついて、肩の荷物を下ろすと僕に影がかかった。
振り向くとにこにこと笑う日にやけた健康そうな老人が立っていた。

おじいちゃん、かな

おじいちゃんは僕が小さい頃逢ったらしいが、それきり逢っていないので初対面のように緊張した。田舎の人のコミュニケーションは都会育ちの僕には未知のもので、ちゃんと笑えるか冷や冷やしながら相手のでかたを待っていた。


「大きくなったな水月。香苗の相手は疲れただろう?入ってゆっくりしなさい。」

「…あ、はい。」


この人がいるなら、安心出来そうだ。


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