なんかやたらと森があるところだなあ…


僕は、揺れる車の窓からこれから住むべく土地をぼんやりと見つめていた。目に映るのは緑ばかりで、家らしきものがぽつぽつと数えられるほどだ。


こんな田舎に住むことになったのは、僕の親が離婚することになったからだった。
そして僕は母さんと共に、この見るからに辺鄙な土地に来ることとなった。
つまりここは母さんの生まれ故郷で、今日から僕はおじいちゃんとおばあちゃんと一緒に住むことになる。


前々から二人は喧嘩ばかりしていたし、いつかこうなるだろうとわかっていたので、そういうことを知らされたときは他人事のように冷静に頷いたことを覚えている。


「水月。ぼーっとしていると、舌かむわよ。この辺ごつごつしてるから。」


母さんが言い終わらないうちに、身体が前の座席に突っ込んだ。痛みに耐える間も与えず、大きな振動に身体が傾く。

そういうことはもっと早く言ってほしい。