血だらけの包丁をもって佇む僕は、端から見たら通り魔かなんかに見える恐さだろう。
笑顔だったし。
僕とおじいちゃんの間には、なんとも言えない空気が漂っている。
「……えへ」
とりあえず笑ってみた。包丁は後ろに隠す。
「……ははは」
おじいちゃんも笑う。若干引き攣ってるのは、気にしない。
「えへへへ」
「はははは」
乾いた笑い声が沈黙を満たした。
おじいちゃんは、冷や汗が流れている。
「……なにやっとんの、あんたたち。」
おばあちゃん、帰還。
「……なんだろ。」
「……なんだろうな。」
「仲いいのねぇ。ほら、さっさと持ち場にもどりなさい。」
おばあちゃんは、しっしっと手を振ると、買物袋を持って台所に入っていく。もうすぐ応援要請、もとい、パシリ要請がくるだろう。
「水月ー!」
「……」
「……」
この家での男の立場は低い。
.