おばあちゃん達と暮らし始めた初日に、敬語はくすぐったいから嫌だ、やめてくれ、と言われた。
だから今は普通に話すし、おばあちゃん達も僕に気をつかってか、なるべく方言なしで話してくれる。

「三枚におろせばいいの?」

「そうよ。あ、それとそれは刺身にしておいてね。じゃ、私は買い物してくるわねー。」

「…いってらっしゃい。」

おじいちゃん…早く帰ってきて…この女達と一緒にいたら、僕明日起きられる自信ない。
やましい意味じゃなく、本気で僕が倒れるまでいいように使う。
絶対つかう。


「ただいま―…」

おじいちゃん!!

僕は台所から踊り出た。

「おじいちゃんお帰り!!」

「あぁ。水月か、ただ…おお!?」

満面の笑みでお出迎えしたら、初めは笑顔だったおじいちゃんが、視線をさげていく内に一瞬で青くなった。そして満70歳とは思えない機敏さで飛びのいた。
僕はただ首をひねる。
どうしたんだろう。

「おまえっ!なんで血のついた業物なんざもっとるんじゃ!!」

右手を見ると、包丁が。


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