「なぁ、この世界はどこまでも不安定だとは思わないか?」
放課後、夕日を背に浴び彼は訊いた。
「そう、かもな。」
突然そんな事を訊かれて少年はやや戸惑いながらも、短く答えた。
「そうだろう? 経済にしろ外交にしろ、人々の安全にしたって何一つ安定したものなんてないじゃないか。一見すると安定しているように見えるものでも、それは不安定な中で一瞬見せる、そうだな。振り子が頂点に達した時に一瞬止まる、まさにそんな状態でしかない。次の瞬間にはもう動き始めて安定を失うんだ。それこそこの一瞬一瞬にしたって、次の瞬間に何が起こるのかも分かりゃしない。明日、交通事故で死ぬことだってありうる。どんなに真面目に生きていたって報われる保障なんてものはどこにも存在しないんだから。」
今日は何時に無く熱く語る彼。
「確かにそうかもしれない。が、だからどうだというんだ?」
少年は静かに返す。