その姿を見送りながら考える。
自分は不幸だと。
天才と言われる程、何かの能力に秀でている訳でもなく、かといって全てを諦められるほど無能でもない。
そこそこに何をしても優秀だが、上には上が居る。
本当に欲しいものは何も手に入らない。
いつも遠慮し、妥協して、満足したふりをしていた。
本当は全てに対して決して満足などしていなかったのに。
嘘や欺瞞で塗り固められた生活に心底吐き気がする。
俺の人生とは何だ?

 いつの間にか始まった授業に耳を傾けながら、少年は出口のない思考の迷路に迷い込んでいた。
教室の窓が風で揺れる。
遠くの空では灰色の雲が覆っており、この辺りも徐々に暗くなって来ていた。